不確かな医学

著者は、アメリカ人でがん専門の内科医。「がん4000年の歴史」でピューリッツァー賞を受けている。 物理学などの他の科学と比較して医学にどんな特徴があるのかを、医学の三つの法則として説明する。TEDの講演が元になっているのでコンパクトでわかりや…

知の果てへの旅

著者のマーカスデュ・ソートイはオックスフォード大学の数学教授。また、「科学啓蒙のためのシモニー教授職」にもある。エクセルやワードを開発した、チャールズ・シモニーの寄付が寄付して、その名の通り科学を広く世の中にPRするために設置された職で、前…

スラスラわかるPython

ProgateのPythonコースを終え、次に何しようかと考えた末に手に取ったのがこの本。 第1章から順番に解説を読んで、事例のプログラムを自分でもその通りに打ち込んで実際に動くかどうか確認して進めて行く。解説が丁寧で、問題の回答もあるので、内容につい…

新薬の狩人たち 成功率0.1%の探求

新薬を作り出すということについて、どうも大きな誤解をしていたようだ。 太古から人は、植物の葉や根っこなどを手当たり次第に口にして、病気に効く薬を探し求めてきた。それこそ長い年月をかけての試行錯誤、当てずっぽうで自分の体を実験台にして偶々見つ…

仏教思想のゼロポイント 「悟り」とは何か

そもそも釈尊は何を経験し、何を語ったのか。釈尊が伝えようとしたことは何なのか。仏教の根っこに迫る。 釈尊は、涅槃を経験し(=悟る)、人々にその涅槃に至るための方法を説いた。涅槃とは何か?一切皆苦の生から離脱すること。苦とは何か。欲しいものが…

トレイルズ

著者は、アメリカのアパラチア山脈に沿って南北に縦貫する全長3,500Kmの自然歩道、アパラチアントレイルをワンシーズンで踏破する。 アパラチアントレイルの踏破をきっかけに、著者は「トレイル」、「道」は、近代の人々にとってなんなのか考える。近代以前…

ヌメロ・ゼロ

これから創刊される新聞のために新しく雇われた新米記者たちが、まずはPRのためのパイロット版を作成する。その中で記者たちが編集長から、新聞記事の作り方、いかに嘘をつかずに注目を集めるニュースを作り出すか、について指南を受ける中で事件が・・・・…

極夜行

「空白の五マイル」で、チベットの人跡未踏の地、ツアンボー峡谷を踏破した、角幡唯介が、今回は、冬の北極圏の太陽を拝むことができない暗闇(極夜)を旅をする。 デポしておいた食料が白熊に食い荒らされたり、出発して間も無く、星の位置で現在地を割り出…

エセー 1

エリック・ホッファーが愛読していたと、著書の中で何回も言及していたので読んでみた。第16章では、とかく人は自分の専門外のことに余計な口を挟みたがると言っている。 船頭は風のことを、牛飼いは牛のことを考えていればいいし、戦士は自分の傷を、羊飼…

原始仏典 第六巻 中部経典Ⅲ

梵摩経に不思議な場面がでてくる。 ゴータマ尊者が悟った人であるなら、バラモンの聖典で昔から伝えられている、偉大な人が持つ32の身体的特徴の全てを備えているはずなので、実際にゴータマ尊者に会って確かめに行く話だ。32のうち30は外から見てわか…

魂の錬金術 全アフォリズム集

アフォリズムとは、短い言葉で、人生・社会・文化などに関する見解を現したもの。警句、箴言、格言。 エリック・ホッファーは、ナチスやスターリンの全体主義、人々が自ら進んで独裁者に熱狂する状況について何度も語っている。 プライドを与えてやれ。そう…

波止場日記

エリック・ホッファーは1902年にニューヨークでドイツ移民の子として生まれる。7歳の時に母と死別し同じ年に視力をほとんど失ってしまう。15歳の時に再び突然視力を回復し、取り憑かれたように読書にのめり込む。一日10時間とか12時間も本を読んでいたそうだ…

量子力学の奇妙なところが思ったほど奇妙でないわけ

素粒子の位置と速度との両方を正確に観測することはできない。電子のスピンは計測されるまでは不定である。スピンを計測することで始めて上向き、もしくは下向きのスピンが現れる。光は光子という粒子の性質と波の性質とを併せ持つ。どちらで立ち現れるかは…

台所太平記

とある作家の家庭に奉公するお手伝いさんたちの生態を観察して時系列に語る、女中さん列伝。谷崎潤一郎が自分の体験も交えて書いたと思われる小説。 昭和11年ごろから30年ごろまで、時期によって多少の増減はあるが常に京都の家と熱海の家の両方で、それぞれ…

熊楠と猫

動物とも植物ともつかない不思議な生物、粘菌の研究者であり、和漢三才図会や本草綱目を中学生の時に筆写し暗記していた博物学者でもある南方熊楠。彼は大変の猫好きだったそうだ。 熊楠が猫について書いた文章や俳句、スケッチを集めた本です。熊楠について…

官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則

職場では作成しなければならない書類が年を追うごとに増えていく。業績評価を客観的にやろうとすればするほど細かい書類を作らされる。また、何か問題が発生するとその対策として何らかの規則が追加され、その規則に従っていることを説明するための書類が増…

最後の「天朝」下 毛沢東・金日成時代の中国と北朝鮮

中国と北朝鮮の関係の深層に迫る長大な本。下巻はソ連でフルシチョフがスターリン批判をはじめた1956年から毛沢東と金日成が最後に会談した1975年までを扱う。 スターリン批判後のソ連とも袂を分かち、資本主義の親玉のアメリカとも対立した中国にとって唯一…

最後の天朝 上 毛沢東・金日成時代の中国と北朝鮮

近年、ロシアや東欧諸国、中国、アメリカで公開されはじめた公文書を元に、1945年からの中国と北朝鮮の関係を掘り起こしていく。関係者の個人名や地名が詳細に記されていますが、その辺を適当に読み飛ばしても読み物として大変面白い。 なるほどと思ったのは…

負債論 その2

著者は富の配分には3種類の方法があるという。 1つ目は、「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る。」という共産主義的な方法。いやいや、共産主義なんて今更ないやろと思ったが、よく考えてみると家族の中や、親しい友人同士、会社の組織内の小さな集団…

負債論 貨幣と暴力の5000年

連休中にザクッと一通り読んだけれど、内容が盛りだくさんで受け止めきれていない。注釈や参考文献に目を通しながらもう一度じっくりと読みたい。 著者は人類学者。まず、経済学の教科書でよく出てくる貨幣の起源に関する物語をきっぱりと否定する。昔々、あ…

ヒトラー(下)1936-1945 天罰

下巻は1936年のラインラント侵攻から1945年のヒトラーの自殺まで、怒涛の9年間です。 ヒトラーがユダヤ人を差別しヨーロッパから追い出そうと呼びかける演説の表現がえぐい。ユダヤ人を害虫や病原菌に例え、ユダヤ人をヨーロッパから抹殺しないと自分たちが…

ヒトラー(上)1889-1936 傲慢

上巻が607ページ、下巻が863ページ、しかも2段組の大著。 「ヒトラーが史上稀に見る極悪人で、ヒトラーが全部悪い。ヒトラーさえいなければあんなことにならなかった。」と考えるのか、「ヒトラーがいてもいなくても変わらなかった。時代の状況であんなこと…

モラル・エコノミー インセンティブか善き市民か

私は、大学で経済学を学んだこともあり、いろんな社会問題はできるだけ市場システムを導入して解決したらいい、人々の心がけに訴えたり啓発活動をするよりも、いろんなものに値段をつけて市場で取引することで効率的に解決できるはずだと思っていた。 どうも…

休戦

プリーモ・レーヴィはイタリア在住のユダヤ人。ナチスに逮捕されアウシュヴィッツに送られる。アウシュヴィッツでの約1年間の暮らしを扱ったのが「これが人間か」。 「休戦」はソ連軍によってアウシュビッツが解放されてからレーヴィがイタリアに帰郷するま…

心と体の不調を解消するアレクサンダー・テクニーク入門

知らず知らずのうちに筋肉に力が入ってしまう。例えば緊張て肩がガチガチになってしまう。こうなると姿勢が悪くなり疲れやすくなる。声も出づらくなる。こんな状況から筋肉の緊張を解いて、できるだけ楽に日常生活を過ごせるようにするのが、アレクサンダー…

カラマーゾフの兄弟

正月休みに家に篭ってこたつで寝転んでじっくり読んだ。 父親フョードル・カラマーゾフと3人の息子たち、ドミートリイ、イワン、アレクセイ のお話。「いろいろあった。」としか要約しようがないくらい波乱万丈で、サイドストーリーも濃厚。最初はしつこい…

これが人間か 改定完全版 アウシュビッツは終わらない

著者はユダヤ人の化学者でイタリアに住んでいた。1944年10月にナチスに捕まりアウシュビッツに送られる。この本は1945年1月にソ連軍に解放されるまでの強制収用所での日常生活を綴る。 科学者だからなのか、著者は強制収用所の悲惨さや残酷さを強い言葉で嘆…

失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

最初から完璧を目指して準備に時間をかけるよりも、そこそこのところで実行して、早めに失敗して改善した方が進歩は早いというお話。もちろん、失敗の原因を詳細に分析、フィードバックして改善に繋げる仕組みを持つことが前提で、そのような失敗から学習す…

ゼロベースランニング 走りの常識を変える!フォームをリセットする!

「Born To Run」を読んで、人間の足は長距離を走るために進化してきたのだから、足の機能を損なうような厚底靴ではなくて裸足に近い状態で走るべきだ、というベアフットランニングに興味を持ち、5本指の靴でも買おうかとアマゾンで物色していた時に、あなた…

BORN TO RUN 走るために生まれた

メキシコの山岳地帯にタラウマラ族という、超長距離を走ることが得意な民族がいる。急峻な山道を何10キロも軽やかに駆け巡る。村のイベントとして走ることもあるし、鹿を持久走で追い詰めて仕留めることもあるそうだ。 そんなタラウマラ族とアメリカの一流…