日本農業への正しい絶望法

著者は、本来の日本農業の強みは技能集約型農業にある、日本の農業を強くするには、農作物をつくる技能を磨いて小さい面積から多くの、品質の良い農作物収穫する技能を磨いていくことにつきる。といいます。


今一番の問題は、これまで受け継いできた優れた日本の農業技術が失われつつあるということであり、そこから目をそらして、形ばかりの有機栽培や、6次産業化、企業の農業参入をすすめても意味がない、さらには、無原則な農地転用により優良な農地がどんどん失われていっているといいます。


農業をやるというと、政府もマスコミも美談にしたてあげようとするけれど、もっと深刻な問題があるということか。農地については、優良農地は原則として転用できないことになっていて、転用の手続も手間と期間がかかって大変なのだが、地元の人が転用したいと思えば好きなようにできてしまうのが実情。そんな状況では、腰を据えて取り組むこともできない。

日本農業への正しい絶望法 (新潮新書)

日本農業への正しい絶望法 (新潮新書)

標高8000メートルを生き抜く 登山の哲学

今年は少し山歩きをしてみたいなと思っていたところで、本屋でたまたま目に入って読んで見た。日本人で初めて14座ある8000メートル級の山すべてに登頂した竹内洋岳さんの著書。


8000メートル超の世界は、宇宙に一番近い場所であり、そこへの登山を海での素潜りにたとえているところが面白い。

高所登山というのは、素潜りに近い感覚ではないかと思います。私は泳げませんから、実際に潜ったことはありませんが、酸素ボンベを使わないで海に潜り、一番深い底にタッチして帰ってくる、8000メートル峰の頂上も、深い海の底のような場所だという気がします。
フリーダイビングでは、海の中にある目印まで到達することが「目標」になります。しかし、到達して終わりではない。海の上まで生きて戻って来なければ、成功したことにはなりません。当然、呼吸を止めていられる時間には限界があります。海の底でのんびりしていたら、海面に上がってくるまでに息が続かなくなり命を落とすかもしれない。一刻も早く戻らなければ自分の生命が危険にさらされる場所。そういう意味で、8000メートル峰の頂上は、深い海の底にも似ていると思うのです。