酒肴酒

吉田健一さんの食べ物関連のエッセイ集。よく呑んだり食べたりするなこの人。

庭の石が朝日を浴びているのを眺めて飲み、それが真昼の太陽に変わって少し縁側から中に入って暑さを避け、やがて日がかげって庭が夕方の色の中に沈み、月が出て、再び縁側に戻って月に照らされた庭に向かって飲み、そうこうしているうちに、盃を上げた拍子に空が白みかかっているのに気付き、また庭の石が朝日を浴びる時が来て、「夜になったり、朝になったり、忙しいもんだね、」と相手にいうのが、酒を飲むということであるのを酒飲みは皆忘れかねている。

私もお酒は好きですが、朝から呑み始めて次の日の朝まで飲み続けるなんて、そこまではやりたいと思ったこともないです。

酒肴酒 (光文社文庫)

酒肴酒 (光文社文庫)


句読点の少なくてうねうねと続く独特の言い回しは、わかりづらいといえばそのとおりですが、慣れてくるとくせになります。一緒に飲んでいる相手がいきなり、酒樽や、亀に変わってしまう話なんかもあって、酔っ払っている時の妄想を書き留めたような作品もあります。ソファに寝転んで読んで、眠くなったら昼寝して、起きてまた続きを読むといい感じです。