禁断の市場

フラクタル幾何学を確立した数学者、マンデルブロがこれまでの常識とは全く違う金融市場の姿を明らかにします。


この20年ほどのうちに従来の金融理論からすればありえないことが何度も起こっています。

2002年にはダウ平均が1日で7.7%下落しましたが、このようなことが起こる確率は標準理論では500億分の1程度になります。2002年7月には7日間の取引で3回の大幅な下落を記録しましたが、この現象での起こる理論的な確率は4兆分の1です。そして、「ブラック・マンデー」と言われる1987年10月19日には、1日で29.9%という過去100年間で最大の下げ幅を記録しました。アナリストによれば、このような暴落が起こる確率はなんと10の50乗分の1以下となります。


そして、今回のサブプライムローンをきっかけとした金融危機。このようなことが起こるのは、従来の金融工学が間違った仮定のうえに構築されているからだといいます。それは

  1. 想定する人間は合理的で、かつ自分の利益のみを追求するものとする仮定。しかし、人間は非合理的な行動をしますし、集団心理でバブルにおどらされることもあります。
  2. 価格変動の分布は正規分布にしたがうと仮定されています。しかし、実際にはべき乗分布となってあり、正規分布よりも激しく変動します。
  3. 過去の実績値は未来には影響を及ぼさないという仮定。しかし、短期記憶や長期記憶の効果が無視できない影響を及ぼしています。=トレンドがあるように見えることがあります。


このような性質は所得階層と人口の関係、地震の震度と発生頻度、川の水位と発生頻度など経済事象、自然事象を問わずあらゆるところにみられるそうです。


著者が言う「金融市場の本当のすがた」

  1. 市場価格とは乱高下するものである。
  2. 市場とは、きわめてリスクが高いものである。−従来の金融理論では決して起こるはずのないリスクが現実には起こる
  3. 市場のタイミングは極めて重要である。巨額の利益と損失は短期間に集中して起こる
  4. 価格はしばしば不連続にジャンプする。そして、それがリスクを高くする
  5. 市場での時間は、人によって進み方が違う
  6. いつでもどこでも市場は同じようにふるまう
  7. 市場は本来不確実であり、バブルは避けることができない
  8. 市場は人をだます
  9. 価格の予想は無理と思え。しかしボラリティなら予測可能だ
  10. 市場における価値は、限定された価値である

禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン

禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン

上記の訳者高安秀樹さんの書かれた「経済物理学の発見」もお薦めです。

経済物理学の発見 (光文社新書)

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