ビューティフルマインド 天才数学者の絶望と奇跡

ゲーム理論における非協力ゲームの解の一種である「ナッシュ均衡」についての理論を確立した、ジョン・フォーブス・ナッシュの伝記です。30歳頃までは、天才的な数学者として「ナッシュ均衡」をはじめとして数々の業績を残しMITの教授となったものの、その後、統合失調症を発症します。それからの約30年間ほぼ廃人のような生活となります。数々の奇行、繰り返される入退院、プリンストン高等研究院を幽霊のように徘徊するなど。ただ、1980年頃から少しずつは症状は改善してきたそうです。その後、ゲームの理論が経済学で注目されるにつれ、ナッシュ自身への評価も高まり1994年にアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞を受賞します。


ナッシュ均衡(Wikipedia):http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E5%9D%87%E8%A1%A1


もともと人付き合いの悪い変わった人だったようですが、発病してからは、妄想につかれて奇行を繰り返し、その後世間との接触を一切絶ってしまいます。本人の精神状態、見守る家族の様子の描写が事細かで、読んでいて苦しくなりました。あるときは、磐石な全能感を持ち、それを裏づけとして人を小ばかにしたような態度をとる。しかし別の時には、他人の評価ばかりを気にして、劣等感にさいなまれ無力に感じる。この2つの間を行ったり来たり。そのうちに妄想、幻聴がひどくなって普通に生活できなくなっていくところが、かなりのページ数を使って描写されます。


大学を徘徊して、おかしなことを話していても、伝説の数学者としてみんながそれなりの敬意を払って、普通の人として接していたことが、病気の回復に役立ったようです。


全能感と劣等感の間を行ったり来たりというのは、若い時は程度の差はありますが誰もが苦しめられるような気がします。「世の中みんな馬鹿ばっかり。」と「自分はなんの価値もない人間や。」を行ったり来たり。いいことなのか、悪いことなのかは別にして、そのうち、「まあ、ちょぼちょぼでいいか。」とふっと楽に考えられる時が来ました。


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映画もありました。
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