吾輩は猫である

42歳にして初めて読んだ。普段小説はあまり読まないうえに、今さら夏目漱石はないやろという衒いがあってなかなか読まなかった。で、読んでみたら・・・、素直に面白かった。みんなが良いっていうものは、やっぱり良いね。全然古くない。

あらゆる生存者がことごとく個性を主張し出して、だれを見ても君は君、僕は僕だよと言わぬばかりの風をするようになる。ふたりの人が途中で逢えばうぬが人間なら、おれも人間だぞと心のうち喧嘩を買いながら行き違う。それだけ個人が強くなった。個人が平等に強くなったから、個人が平等に弱くなったわけになる。(中略)
強くなるのは嬉しいが、弱くなるのは誰もありがたくないから、人から一ゴウも犯されまいと、強い点をあくまで固守すると同時に、せめて半毛でも人を侵してやろうと、弱い所は無理にも拡げたくなる。こうあると人と人の間に空間がなくなって、生きているのが窮屈になる。出来るだけ自分を張りつめて、はち切れるばかりにふくれ返って苦しがって生存している。苦しいからいろいろの方法で個人と個人との間に余裕を求める。

その結果、飼い主の苦沙弥先生はじめ友人たちが語る未来予想図では、自殺が増えて離婚が増える。恐れ入りました。


実家の小屋の2階に、父が若い頃に無理して買った中央公論社の「日本の文学」が30巻ほどある。次は志賀直哉あたりを読んでみたい。

吾輩は猫である (岩波文庫)

吾輩は猫である (岩波文庫)