完璧な赤 「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語

赤色の染料をめぐるすったもんだのお話。19世紀に化学染料が開発されるまで、繊維を鮮やかな赤色に染めることができるのは、サボテンの表面につく「コチニール」という虫からとれる染料だけだった。メキシコの限られた地域でのみ飼育され、メキシコを支配していたスペインが取引を独占し莫大な利益を上げていたそうだ。スペインにとっては植民地から採れる産品としては銀に次ぐ重要なものだったらしい。


独占を維持するため、虫を生きたまま国外に持ち出すことは固く禁じられるだけでなく、コチニールの正体も秘密にされていた。ヨーロッパではコチニールは植物の実だと思われていたそうだ。スペイン以外の国は何とかコチニールの正体をあばいて自国で栽培しようと、船を海賊に襲撃させたり、スパイを送り込んで生きたまま持ち出そうとやっきになったが、環境の変化に弱い虫のためなかなか成功しなかった。


今では、合成染料のおかげでド派手な赤色は安く手に入るようになったものの、19世紀中ごろまでは赤色のは、権力の象徴だったらしい。金持ちは好んで、鮮やかな赤を身につけたらしい。レッドカーペットなんかはどえらい金がかかるものだったのだろう。


コチニールは今も、天然由来の赤色としてアイスクリームなどのお菓子、口紅などにて使われているようです。有名なところでは「カンパリ」の赤色も。

↓こちらでコチニールの赤が見られます。
著者エイミー・B・グリーンフィールドのサイト:http://www.amybutlergreenfield.com/index.html

完璧な赤―「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語

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