読書家の新技術

実家の小屋から掘り出して再読した。学生の頃読んで第3部の読書ガイドに挙げられている本を順番に読んでた。私が白川静宮本常一網野善彦、阿部勤也を読み始めたきっかけになった本だ。


みんなが当然のこととして使っている「京の着倒れ、大阪の食い倒れ」という言い回しがたかだか昭和の始めころに定着したものに過ぎず、その前は「江戸の食い倒れ」が一般的だったことを例にあげ、この目で確かめられる事実にのみ立脚して考えるていると足元をすくわれるよ、と説く。書斎で読書でもして、事実から少し離れてものを考えることも大事だよと言う。


事実=常識に拘泥していると、現代の社会や人々の思考の枠組みを無理やり押し付けて、古典をかってに解釈することになるという。サラリーマンの処世術としてしか、「論語」を理解できない当時の保守系の論客を批判、孔子の革命家や呪術使いの側面を無視して、「寸足らずの孔子像を描いている。」と言う。


今になって思うと、俗流教養主義と言われながらも当時の会社員は「論語」を齧ってみようとするだけまだ余裕がある。最近のライフハック系のビジネス書は、もっと短い射程のことしか考えていない。。

読書家の新技術 (朝日文庫)

読書家の新技術 (朝日文庫)