アニマルスピリット

私が大学で経済学を勉強した時には合理的期待学派の考え方に痺れたものです。個々人の予想、期待は不合理かもしれないが社会全体としての期待は合理的なものである。政府が財政政策で、支出を増やしたとしても国民は将来の増税を正確に予想して、支出を減らすので財政政策には効果がない。金融政策で金利を下げたとしても将来のインフレを織り込んで賃金が上昇するので効果は無い。スパッと割り切る考えがわかりやすくて、政府の裁量はできるだけ小さくすべきだと思っていました。


人々の予想はそれほど合理的でなくゆがみがある。そのゆがみがバブルと大恐慌を引き起こすことをこの本は八つの質問を通して解き明かしていきます。ゆがみとは、「安心とその乗数」、「公平さ」、「腐敗と背信」、「貨幣錯覚」、「物語」。


八つの質問は
・なぜ経済は不況に陥るのか
・なぜ中央銀行は経済に対して(持つ場合には)力を持つのか?
・なぜ仕事の見つからない人がいるのか?
・なぜインフレと失業はトレードオフ関係にあるのか?
・なぜ未来のための貯蓄はこれほどいい加減なのか?
・なぜ金融価格と起業投資はこんなに変動がはげしいのか?
・なぜ不動産価格には周期性があるのか?
・なぜ黒人には特殊な貧困があるのか?


失業がある場合には、十分に賃金が下がれば失業がなくなるはずなのに賃金が下がらない。それは、合理性よりも他の労働者に比べて公平であるかどうかにこだわってしまう、ゆがみが原因だといいます。


訳者も書いているように、だからどうすればいいかについては特に説明がないのが少し物足りないです。

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