アンリ・ルソー楽園の謎

小学校の図工の教科書に載っていた、アンリ・ルソーの濃密な緑でむせかえるようなジャングルの絵が忘れられない。ジャングルというとあの絵を思い出す。


この本は、アンリ・ルソーの謎の多い生涯を解き明かしていきます。パリの徴税吏の仕事を40歳すぎまでやって、年金の受給資格ができると、とっとと仕事を止めて絵に専念します。世間のことに疎く公務員としては全くの役立たずだったようだ。絵に専念してからも、遠近法もわきまえない稚拙な絵であると馬鹿にされ、絵は全く売れず、親戚にも見放され貧乏暮らし。死去する1910年ごろになって、やっと少し世間で評価されるようになったそうだ。


当時の絵画の潮流のどこにも位置づけられない、彼独特の画風。著者はルソーをラスコー洞窟に動物の絵を描いた人々と同じように、絵画の呪術性を信じていたのではないかといいます。

ラスコーやアルミラの洞窟の岩壁にみごとな牛や鹿や猪を描いた人びとは、絵が単なる外観ではなく、真の実在であると、おそらくは信じていた。(中略)呪術とかかわるこのような絵画観は、今日でも未開と呼ばれている人々のあいだに見出される。それは、絵画が芸術となる時代まで、人々の心を支配してきた。その上、原始的心性にもとづくこのような絵画観は、私たちの心から完全に消え去ってもいない。現代画家の中で、ルソーは、この種の絵画観にのもっとも近くにいた人である。


ルソーの絵は今から15年ほど前、ロサンゼルス近郊のパサデナNorton Simon Museumに見に行った。ルソーの絵が一枚だけそこにあるのを知ってロサンゼルス観光のついでに見てきた。教科書と同じやなぁというのと、緑色が鮮やかできれいやなぁという程度の感想なのが情けないですが。
Norton Simon Museum:http://www.nortonsimon.org/collections/browse_artist.php?name=Rousseau,+Henri


日本でもどこかにルソーの絵がないかと探してみたら、箱根のポーラ美術館で3月までアンリ・ルソーの展覧会やっている。少し遠いけれど行ってみたい。
ポーラ美術館:http://www.polamuseum.or.jp/exhibition/01_01.html


アンリ・ルソー 楽園の謎 (平凡社ライブラリー)

アンリ・ルソー 楽園の謎 (平凡社ライブラリー)