禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン

フラクタルの概念を産み出したマンデルブロが、フラクタル幾何学を使って金融市場の変動を分析します。フラクタルというのは、色々なものの凸凹、ギザギザ、ザラザラを扱う考え方です。例えば、海岸線。地図を見ると複雑に入り組んだ形をしていますが、拡大して見ても同じように入り組んでいる。さらに、石ころや砂粒レベルに拡大しても、ごつごつ入り組んでいる。そんなものを扱うらしい。


著者は、株価や為替、商品相場の値動きのグラフのギザギザを、このフラクタルの概念で分析します。ブラック−ショールズの方程式に代表される、従来の金融工学の考え方では価格変動は正規分布に従うとしているが、過去のデータを分析してみると、実際には、べき分布にしたがっていて、とんでもない変動が起こる確率は正規分布よりもずっと大きい。

私たちは今まで、誤ったリスクの計測を行ってきたのです。リスクをより正しく評価すれば、予期せぬ損失をこうむる可能性は減少します。何世紀にもわたり、船の製造業者は船体と帆の形をどうすればようのかを研究し続けました。彼らは、大部分の日には海は穏やかだということはわかっていますが、それと同様に時には大嵐がくることも知っていました。彼らは天候が穏やかである95%の航海に備えるのみならず、嵐が来て彼らの技術が試される時に備えて船を頑丈に設計したのです。現在の投資家および投資業務に携わっている人々は、天候がずっと良いものと信じて、木を束ねただけのいかだに乗って大海原に漕ぎだしてしまった人と同じ境遇だと言えばその危うさがわかっていただけるでしょうか。

禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン

禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン