Hotelマリナ

現地がどんな状況なのか、何ができるのか、一度自分の目で見たいと思い、県民ボランティアセンターが運営しているボランティアバスに参加した。金曜日の夜に金沢を出発して、土曜の朝に石巻に到着、土、日の二日間作業して、日曜の夕方に石巻を出発、月曜の未明に金沢に帰ってきた。


結論としては、行ってよかった。やらなきゃいけないことはまだたくさんある。作業した場所の周りには、瓦礫の運び出しやヘドロの除去が終わっていない家がたくさんある。今回は40人がかりで二日間作業しても、せいぜい2、3軒の家の敷地から津波で流れ着いた瓦礫を取り除き、表面に10センチほど堆積したヘドロを削り取ることができただけだ。誰かが、そこに住むにしても、住まないにしても瓦礫とヘドロを片付けてしまわなければ次の段階に進めない。被災地の広大さを思うと、いつになったら終わるのが気が遠くなる。


我々が作業したのは、現在避難所になっているHotelマリナの敷地とその周辺の民家。建物は流されてはいないけれど、1階は鴨居の上あたりまで水没した跡が残っていた。ホテルは2階の客室は無傷だったので避難所となっていて、数家族が生活している。土曜日の午前にまず着手したのは、ホテルの敷地内の植え込みなどに堆積しているヘドロを取り除く作業。5センチから10センチの厚さで真っ黒でねっとりとしたヘドロが地表を覆っている。スコップで掬うと臭い。これを土嚢につめて、道路脇にどんどん積んでいく。水気を含んだヘドロはずっしりと重い。直ぐに汗まみれになる。20分作業して10分休憩。これを繰り返す。


午後は、隣の民家に場所を移し、敷地からまず瓦礫を運びだし、その後、地表のヘドロを削り取る。最初は、短すぎるのではと感じた、20分の作業時間が、午後気温が上昇するにつれて、だんだんきつくなってくる。なぜだかよくわからないが、家の玄関脇に、牛か馬の糞が大量に積もっていた。やっぱり臭いので作業したくないなと遠巻きにながめていたが、やっぱり、これも土嚢に詰めて運び出す。


なんの脈絡もなくいろんなものが流れついている。会社の売掛明細、中身が入ったままのマヨネーズの容器、電気釜、タイヤ、袋に入った肥料、飼料、ブランコ、ドラム缶等等。すべてを飲み込んでしまう津波の威力を見せ付けられる。


10人が一班となって作業した。初対面の人ばかりだったので、はじめはバラバラに動いていたけど、二日目ともなるとそれぞれの役割分担のようなものも決まってきて、効率良く作業を出来るようになった。休憩時間に、お話した人は、結婚して宮城県から金沢に移り住んだ方だった。親戚やお友達もたくさん被災されたので、金沢から物資を送ったり、手紙を書いたり、訪問したりして、なんとか、直接お手伝いしようとしたそうだ。でも、親しいなかでも、支援する側と支援される側の立場が固定してしまうのが、お互いに気まずく感じることもあったので、こうして、その他大勢の1人として、ボランティアに参加しているとお話されていた。今回が3回目の参加だそうだ。


二日間思いっきり身体を動かしていい運動になった。少しずつでも自分の力で街が綺麗になっていくのも、達成感がある。いろんな立場の人と力をあわせて作業するのも面白い。なによりも、帰り道に立寄った、スーパー銭湯で汗を流した後のビールは、ここしばらくなかったくらい旨いビールだった。


今回の教訓:土嚢に詰めるのは多くて6割程度にしましょう。詰めすぎると、口を縛りにくくなるし、重くて運ぶ人が腰をいわします。