電力自由化の経済学

電力市場の自由化に関して幅広い観点から課題を提示していきます。


 ヨーロッパやアメリカの状況、自由化した場合の送電網の混雑管理の仕組み、送電網を拡充したり維持するための費用を回収する仕組み、オークションやリアルタイム料金など需給調整のための制度設計、ユニバーサルサービスや環境問題、原子力発電など公益的課題への対応、など。全部読むと自由化についての論点をひととおり眺めることができると思う。


海外に比べて電気料が高いのは、日本という国の事情も大きな要因になっていることがよくわかった。

  • 狭い国土の中に多くの火力発電所を立地するために、発電所からの硫黄酸化物や窒素酸化物の排出に対して非常に厳しい規制がされていること。発電量あたりの排出量で言えば、日本はアメリカなどに比べれば一桁少ないらしい。そのためのコストは馬鹿にならない。
  • ピークとオフピークの差が、大きく、変動が急激であること。変動に耐えうるような丈夫な発電や変電設備が必要となり、また過酷な使い方となるため修繕費がかさむらしい。


 こんな事情の中、総括原価方式による料金算定の仕組みであるため、どうしても過剰な設備をもつようなインセンティブが働いてしまう。


資源の効率的な配分を図るため自由化して市場の仕組みを取り入れるにしても、需給調整や将来にむけた投資を引き出すような制度を考えなければいけない。そんな仕組みを考えるのも面白そう。