水の道具誌

身の回りの道具の起源やその使われ方について深く掘り下げることで、我々の生活様式の変化を辿る、山口昌伴さん。どの本を読んでも毎回、目からウロコが3枚ほど落ちるような新たな発見があります。これまでに読んだことがあるのは、
「台所の一万年 食べる営みの歴史と未来」:http://d.hatena.ne.jp/benton/20110222/p1
「ちょっと昔の道具から見直す住まい方」:http://d.hatena.ne.jp/benton/20100831/p1


今回は、如露、鹿おどし、水琴窟、金魚鉢、水滴、傘、鮟鱇、爪革、水準機、バケツ、洗濯板、霧吹きなどなど、水に関係する道具が登場します。

今も水甕を活かしてつかっている家があった。山で水を汲んできて、水甕に溜めている。これは岩手県も浜に近い山持ちの家だった。流しの方をみると、町営だろうが、水道は来ている。奥さんに「水甕も、まだ使っているんですね」と問うと、「山の水は美味しいし、晒しておくと軟らかくなりますし、それに費えかかりませんから」という答えだった。費えは水道代である。

各家々に、水道が引かれ蛇口をひねればジャーと水が出るようになったのは、ここ50年ほどのこと。その前は、各自井戸を掘るか、山の沢水を筧で引いてくるか。井戸の水は、電動ポンプ、その前は手押しポンプ、その前は、滑車をつかった車井戸。もっと前は井戸の縁から縄をはわせてくみ上げる井戸。井戸も地域の共同井戸、個人の家の建物のなかに井戸をもつのは大変な贅沢だったらしい。水汲みは日々の家事のうちでも労力を使う大変な重労働で、仲人は、先ず嫁ぎ先の井戸の様子、内井戸かどうか、共同井戸までの距離はどれくらいか、を確かめたそうだ。


水の道具誌 (岩波新書)

水の道具誌 (岩波新書)