隠れていた宇宙 上

今自分が存在している宇宙とは、別の宇宙が無数に存在している。今のところ実験によって証明はされていませんが、最近の物理学の理論を敷衍していくと多宇宙論に行き着く。それも様々な理論から行き着く。そんな様々な多宇宙論を順番に説明していきます。


ひも理論のランドスケープ多宇宙の説明の中で、宇宙定数のお話が出てきます。

いずれにしても、一つ言えることがあります。一般相対性理論では場の方程式に宇宙定数を含めることができます。いつの日か、恒星がつくる空の構図、構成の見かけの運動、そして距離に応じたスペクトル線の位置に関する実知識が十分に進歩して、宇宙定数が消えるかどうかという問題に、実証的な判断を下すことができるかもしれません。信念は立派な動機ですが、判断を誤らせるおそれがあります。

これは、1917年に書かれたアインシュタインの手紙の一節です。


一般相対性理論によると、存在する星の重力によって互いに引き寄せられるので、宇宙は収縮していき、最後には全てが一点に集まってしまう(=ビッグクランチ)。宇宙が収縮して崩壊するという結論を受け入れられなかったアインシュタインは、重力に反発する力、斥力を一般相対性理論の式のなかに入れ込んで、宇宙が収縮も膨張もしていない定常状態であるという形式を整えた。


その後、アメリカのハッブルの観測によって、星はどんどん離れている。宇宙は膨張しているということがわかって、ビッグバン理論が確立され、宇宙定数を一般相対性理論の式に組み込んだことはアインシュタインの生涯最大の誤りと言われることになる。


宇宙が膨張しているのはわかったが、宇宙の膨張速度は減速しているのか、加速しているのか?


減速しているとすれば、宙に投げ上げたボールがやがて地面に落ちてくるように、宇宙の膨張は止まり、やがて収縮に向かう。加速しているとすれば、銀河の間の距離はどんどん離れ、夜空を見ても星がほとんど見えなくなる。


それを調べたのが、今年のノーベル物理学賞を受賞した、ソール・バールマター、ブライアン。シュミット、アダム・リースの3人。ビッグバンから70億年後までは減速、その後は加速しているそうだ。つまり宇宙定数は消えない。

隠れていた宇宙 (上)

隠れていた宇宙 (上)