白楽天詩選 上

楽天と言えば、玄宗楊貴妃の悲恋の歌、長恨歌。これを暗唱するようにと、高校1年の時の冬休みの宿題に出されて大変困った思い出がある。漢文の先生は、猫と暮らす仙人のようなひと。「高校生になったからには、みんな諸橋轍次先生の大漢和辞典くらいもってるよね。」と嘯いて生徒を煙にまく。上巻にはその長恨歌も収録されている。不思議なもので一度読むとなんとなく昔覚えたフレーズを思い出す。


その他、気に入った詩をいくつか紹介すると。

夜雪

既に衾枕の冷たきを訝り    すでに ちんきんの つめたきを いぶかり
復た窓戸の明るきを見る    また そうこの あかるきを みる
夜深くして雪の重きを知る   よるふかくして ゆきのおもきを しる
時に聞く、竹を折る声     ときにきく、たけをおるおと

今の季節にぴったり。夜中にしんしんと冷え込んで雪が積もる景色が目に浮かぶ。今なら、時に聞く、除雪車の音。か

食後

食罷りて一覚の睡り      しょくおわりて いっかくのねむり
起き来たりて両甌の茶     おききたりて りょうおうのちゃ
頭を挙げて日影を看れば    こうべをあげて にちえいをみれば
已に復た西南に斜めなり    すでにまた せいなんに ななめなり
楽人は日の促きを惜しみ    らくじんは ひのみじかきを おしみ
憂人は年の賖きを厭う     ゆうじんは としのおそきを いとう
憂いもなく楽しみも無き者は  うれいもなく たのしみもなきものは
長短 生涯に任す       ちょうたん、しょうがいにまかす

こちらは昼寝の詩。昼寝から目覚めた気だるい感じがいい。白楽天は昼寝の詩をたくさんつくっているそうだ。


白楽天詩選 (上) (岩波文庫)

白楽天詩選 (上) (岩波文庫)