都市は人類最高の発明である

「もうすぐ新幹線が来るので、PR、PR。」と大騒ぎしている時だからこそ、都市についてじっくり考えたいと思い手に取ってみた。


新しいイノベーションのアイディアは都市から生まれる。というのが著者の主張の大前提。これは、ジェインジェイコブズが「発展する地域 衰退する地域」で新しい産業は都市の企業や人が核となって創出されるという考え方と同じ。


なぜ、都市から新しいアイディア生まれるかというと、多くのひとが密集して活動することで直接顔を合わせてそれぞれのアイディアを交換する頻度が増えるのでそこから新たな発想が生まれるといいます。


密集しても人々が快適に暮らせるようにするためには、建物の高さ制限をなくすなど建築規制を緩やかにし需要にあわせて居住スペースを供給できるようにすると同時に、公共交通を整備していくことが大事だといいます。極端に厳しいゾーニング規制や、緑地の確保、伝統的建築物を保存といった規制は、居住スペースの供給の制約となり地価の高騰を招くといいます。大規模な再開発に反対し昔ながらの街並みの保存を重視したジェイコブズの考えと異なるところ。


都市はイノベーションの拠点となるだけでなく、「環境にもやさしい」といいます。郊外の大きな一戸建ては冷暖房や、自動車での移動に莫大なエネルギーを使います。一方、大都市はそこそこの広さの高層アパートに密集するため冷暖房の効率も良く、移動は公共交通機関が中心となるため、住民1人あたりのエネルギー消費は郊外の一戸建て生活よりも少ないそうです。


著者は、発展途上国における都市の貧困問題については、都市が貧困者にとって豊かになる可能性がある魅力ある場所で多くの人を引き付けるからであり、都市が成功している証であるといいます。都市の貧困と農村の貧困のを比較すれば農村の貧困のほうが圧倒的に悲惨だそうです。


では、どうすれば多くの人が集まる魅力的な都市になるか? 成功している都市として、東京、シンガポール、ガボロン(ボツアナ)、ボストン、ミネアポリス、ミラノ、バンクーバー、シカゴ、アトランタ、ドバイが挙げられています。成功のきっかけはそれぞれですが、教育水準の高い、優秀な人達を引き寄せることが重要だといいます。

あらゆる成功した都市は確かに共通点を持つ。成功するためには、都市は賢い人々を集めて、彼らが協力して働けるようにしなくてはならない。人的資本なしの成功した都市などというものはない。


うまくいっていない都市として、デトロイトニューオーリンズを挙げています。デトロイト自動車産業という単一の巨大産業に頼り切っていたため、自動車産業が斜陽になったときに次の産業を生み出すことができなかった。都市再生に向けた住宅建設も過剰供給で値下がりを招くだけだったとのこと。ハリケーンで壊滅的な被害を受けたニューオリンズは都市再生のために巨額のお金を建設会社に払うよりも、そのお金を住民1人ずつに直接配って他の街でいい教育を受けたほうが良いのではないかとさえいいます。

助けるべきは貧乏な人で、貧乏な場所ではない


どうやったら賢い人達に来てもらえるのか?


都市は人類最高の発明である

都市は人類最高の発明である