国家(上)

「市場の倫理、統治の倫理」を読んで、政府とは統治の組織で、市場(=企業)とは別の原理で動いているんだと今さらながら気がついて、それならば根本から考えて見ようと読んで見た。訳文が平易なので、一度は読んでおいて損はないと思う。


「正義」とは何か?という議論から対話が始まる。誰が見ていなくても正しいことをするのがなのか、他の人に「あの人は正しいことをやっている。」と思われることが正義なのか、というような議論をしていて行き詰ったところで、突然、小さい正義を考えるにあたって、大きな正義を最初に検討して見て、その結論を小さなものに当てはめて考えて見よう。個人にとっての正義を考えるまえに国家の正義とは何かということを考えてみようと話が展開する。


で、国家のそもそもの成り立ちから議論がはじまる。

ぼくの考えでは、そもそも国家というものがなぜ生じてくるかといえば、それは、われわれがひとりひとりでは自給自足できず、多くのものに不足しているからなのだ。
(中略)
したがって、そのことゆえに、ある人はある必要のために他の人を迎え、また別の必要のためには別の人を迎えるというようにして、われわれは多くのものに不足しているから、多くの人々を仲間や助力者として一つの居住地に集めることになる。このような共同居住に、われわれは<国家>という名前をつけるわけなのだ。そうだね?

次に<国家>にはどんな職業の人が必要かを考える。大工に靴職人、農民、貿易商などなど、みんな豊かに暮らしていくためにはあったほうがいいよね。という話になり、最後に、多くの国民を抱えて国家が大きくなると、隣の国と戦うことになるので、国家の守護者が必要だという結論になる。


では、その<国家の守護者>はどんな人であるべきで、継続的に守護者を育てていくために国家はどうあるべきかという議論が続く。おもしろかったのは

  • 優秀な女性も男性と同じように国家の守護者となるべきだ。
  • 子供が生まれたら一箇所に集めてどの子が誰の子供かわからないようにして育てるべき。国全体が一つの家族のように助け合うようになる。ということ。

結論として、正義が実現されている国家というのは、理性=支配者 気概=軍人 欲望=普通の人 がバランスよく機能している状態だと言います。では、この理想の国家を実現するためにはどうすべきか? 知を愛する人(=哲学者)が統治すべきとだというところで、上巻はおしまい。


下巻買ってこよう。

国家〈上〉 (岩波文庫)

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