原始仏典 第1巻 長部経典1

ここ数年、気が向けば禅宗関連の本を読んできたのだけど、本当はブッダはどんなことを言っていたのか、ブッダの生の言葉に近いものを読みたくて、この本を手に取った。


口承で伝えられたブッダの教えをある時点で、文字で書き留めたのがお経なのだろう。しつこいくらい同じことを繰り返して何度も表現する。でも、書いてあることは非常にシンプルで実践的。日々を心安らかに暮らすための手順が書かれている。ざっくり言うと、

戒めを正しくまもり、感覚器官の門を守り、気を落ち着け(正念)、正しく自覚して(正知)、満足しているのです。

このための実践方法を丁寧に何度も説いている。

まずは、戒律。生物を害することを捨てる。与えられないものをとることを捨てる。清らかでない生活を捨てる。嘘を捨てる。中傷を言うことを捨てる。粗野なことばを捨てる。無意味で飾った言葉を捨てる。食物や衣類を貯蔵することをやめる。演劇や相撲、闘牛などの娯楽をみることをやめる。将棋や碁などの遊びや賭け事をやめる。大きくて立派な寝台を使うことをやめる。化粧やマッサージをやめる。うわさ話をやめる。言い争いをやめる。人を使い走りに遣ったり、自分が使い走りになることをやめる。あやしげな占いをやめる。呪術をやめる。このような禁止事項を、具体的に細かい事例をあげていきます。


次に、感覚器官の門を外界から守る。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚で物事を認識する時、外側の特徴や細かいとことにとらわれるな。とらわるると、貪欲と憂鬱と邪悪なよくないことが入り込むと言います。


そして、気を落ち着けて(正念)、正しく自覚する。(正知)歩くとき、座るとき、食べるときなど、日常生活のすべてにおいて正しく自覚して行動しろといいます。


次に、満足を知る。体をつつむだけの最低限の衣で満足し、腹を保だけの托鉢で得られる食物のみで満足しなさい。


森や山など人里離れたところに住んで、足を正しく組み心を集中して座る。そして、貪欲、憎しみ、ものうさとのんびりした鈍さ、心のうわつきと後悔、疑いの五つの蓋いを捨て去る。そうすると、喜びが生じ、身体が軽やかになり、安楽を感じるといいます。(この先もまだまだ続くのですが、とりあえずここまで。)


人は、初期状態で病気にかかっている人、雲がかかった空のように、良くない状態であり、このような手順を踏むことで病気から回復し、雲がなくなり青空になり、安らかな気持ちになると、大変わかりやすく、実践的に説いています。


ひとつ意外だったのは、ブッダは、霊魂とかあの世について何も語っていないということです。

わたしは、<霊魂と身体は同じものである>とか、<霊魂と身体を異なるものである>などということをいいません。


原始仏典。平易な言葉で読みやすく、当時の生活様式の一端にも触れられて面白いです。500ページ超で全7巻、少しずつでも読み進めていきたい。

原始仏典〈第1巻〉長部経典1

原始仏典〈第1巻〉長部経典1