記憶のしくみ 上 脳の認知と記憶システム

生き物が物事を記憶するしくみについて、ノーベル生理学・医学賞をとったエリック・カンデルが解説する。


記憶には非陳述記憶と陳述記憶との2種類がある。


非陳述記憶とは、意識できない記憶のこと。例えば、最初は大きな音に驚くけれど、同じような音が繰り返し何度も聞こえるとそれほど驚かなくなるのが馴れ。逆に、ものすごい恐怖を体験するとしばらくは、ほんのささいな物音にも反応してしますのが、鋭敏化。パブロフの犬のように、ある条件のもとで報酬を与えるつづけると、条件が実現しただけで身体が反応してしまうのが、古典的条件付け。この3つは、物事を覚えているのだけれど、無意識に身体が反応するたぐいの記憶だ。


一方の陳述記憶は、過去を頭の中でありありと思い出す記憶、意識できる記憶だ。普通は記憶といえばこちらを思い浮かべる。


上巻では、まず、アメフラシを何度も針でつついた時の、えらを引っ込める反応時間の変化と、その時の神経の働きを調べて、非陳述記憶のしくみを解説していく。馴れは、同じ刺激を繰り返すとシナプス間の神経伝達物質の出方が変わってくるそうだ。


次に陳述記憶を実現するために、脳のどの部分が働いているのかを病気や事故などの陳述記憶に障害がある人の脳を調べたり、猿などの動物実験で確かめる過程を解説します。


物事を考える過程やしくみを明らかにするというのは、自分自身の頭の中身をひとつづつ分解していくようで、読んでいると妙な居心地のわるさを感じる。知ったから日常生活がどうなる訳でもない。でも、どうなっているか、知りたくなるテーマだ。


記憶のしくみ 上 (ブルーバックス)

記憶のしくみ 上 (ブルーバックス)