日本はなぜ旅客機をつくれないのか
著者は石川島播磨重工でジェットエンジンの設計に従事していた方。各章のタイトルのとおり、戦後の航空機産業の大型プロジェクトがなぜうまくいかなかったかが綴られています。
第1章 ジェットエンジン自主開発開発路線の挫折
第2章 帯に短したすきに長しの自衛隊機C1、F1、PS1
第3章 殿様商法のYS11
第4章 刀折れ矢尽きた小型機MUシリーズ
第5章 YX/B767、偉大なるボーイングの下請け
第6章 夢ははるか遠くへ、次期支援戦闘機FSX
うまくいかなかった原因を抜き出してみると、
- 欧米では航空機産業の振興を国家プロジェクトと位置づけて、莫大な開発費を国が負担してきたが、日本は中多半端な額しか投入されてこなかった。
- 民間機の分野でも莫大な開発費を負担するために、アメリカのボーイング、ヨーロッパのエアバスと寡占化が進んでいるが、日本には機体5社、エンジン3社がひしめき合っている。
- 航空行政、型式認定は国交省、生産は経産省、軍用は防衛省と、航空機を管轄する省庁が分散してしまい、国としてうまく一貫した振興策を実施できなかった。
- 民間向け旅客機の仕事が産業として成り立つようになったのは、B767の下請けを行うようになったここ20年くらい。未だに防衛省依存が抜けきらず高コスト体質が抜けきらない。
カナダのボンバルデイアやブラジルのエンブライエルは、本格的に旅客機を作り始めて20年くらいで急成長しているので、MRJもうまくいくことを期待したい。それにしても、堀越二郎や東条輝雄など戦前から軍の航空機開発に携わっていた人達が、昭和40年代まで航空機産業の第一線で活躍していたとは知らなかった。
- 作者: 前間孝則
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2002/10
- メディア: 単行本
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