「人口減少経済」の新しい公式 「縮む世界」の発想とシステム

地方創生とかいって地方への移住者を少しばかり増やしたところで、あまり解決にならないような気がしたので、人口減少が経済に与えるインパクトを確認してみたくなって読んだ。2004年に出版された本なのでデータは少し古いのだが、現実と比較しながら読んでみようと手に取ってみた。

 

まず、2000年から30年間で、日本全体の総労働時間は3分の2に縮小するとある。中間点である2015年ではおおよそその半分の15%減少することになっている。実際のデータでは、生産年齢人口は2000年の8,638万人から2015年には7,785万人へと約10%減少している。その間に一人当たり労働時間も約5%減少しているので、合わせて15%減とほぼ著者の予想通りの結果となっている。

 

一方その間のGDPは、名目で2000年の510兆円が2014年に490兆円になっている。国民所得では375兆円が364兆円とほぼ横ばいとなっている。15%も労働の投入量が減少しているにもかかわらず、GDPはほぼ横ばいなので、よくやっていると評価してもいいような気がする。

 

気をつけなければいけないと思ったのは、これまでの15年間で生産年齢人口は10%減少したが、総人口はほぼ変わっていない。2000年の1億2700万人から少し増えて2010年は1億2800万人、2015年に1億2700万人に戻った状態だ。総人口の減少はこれからということになる。ということは、需要の縮小はこれから本格化していくということだ。

 

著者は、日本経済は投資財型産業に偏重して設備投資を行ってきたが、人口の高齢化に伴って貯蓄率の低下=投資余力減となるため、消費主導の経済に変わらざるを得ないだろう。その結果、素材などの投資財産業よりも消費材・サービス産業が伸びるだろうと言っている。実際にはどうかというと、家電製品などの消費材は中国、韓国の企業にシェアを奪われて、市場で力があるのは工作機械や電子部品、炭素繊維など素材産業などで、逆の結果になっている。

 

ちょっと昔の経済関係の本を読み直して現実と比べてみるのも面白いもんです。

「人口減少経済」の新しい公式(日経ビジネス人文庫)

「人口減少経済」の新しい公式(日経ビジネス人文庫)