私は魔境に生きたー終戦も知らずニューギニアの山奥で原始生活十年

 太平洋戦争中、東部ニューギニアでの戦闘で山奥に取り残された著者が、その後10年間にわたり仲間と山中で生活した記録。

 

戦闘に敗れて、山奥を彷徨する兵士たちが飢えやマラリアでバタバタと倒れていくところは悲惨としか言いようがない。行軍の経路に脱落者の屍が累々と連なった光景にはぞっとする。

 

アメリカによる掃討作戦が一段落すると、取り残された著者たちは日本軍が戻ってくることを信じて山奥での籠城生活を始める。最初は敵の目を盗んで、日本軍の物資集積所だった場所から乾パンや缶詰を運び出して食いつないでいたが、やがて、そのような物資は敵に焼き払われたり、雨ざらしのため劣化して食べられなくなってしまう。

 

そうなると食料を自給しなければならない。山奥の比較的平坦ば場所でジャングルを開墾して農園を作り、パパイヤやバナナ、タピオカを栽培する。蛋白源として猪やヒクイドリを小銃で捕らえる。

 

最終的には、17名の仲間が4人にまで減ってしまうような厳しい生活だが、そんな中でも生活環境を改善するため、木から繊維を取り出して衣服にしたり、鉄製品を手入れするために、木炭を焼き吹子を自作して鍛冶をするなど、しぶとく工夫を重ねる姿は凄いとしか言いようがない。

 

人間いざとなればここまでやれるという、妙な自信を得られる本です。探検ものや漂流記、サバイバルものが好きな人は是非読んでみてください。

 

私は魔境に生きた―終戦も知らずニューギニアの山奥で原始生活十年 (光人社NF文庫)

私は魔境に生きた―終戦も知らずニューギニアの山奥で原始生活十年 (光人社NF文庫)