野生の知能 裸の脳から、身体・環境とのつながりへ

 コオロギの雌は、雄の声を聞き分け好みの声で鳴くパートナーを求めて動き回る。

 

ケアシハエトリグモは、他のクモの巣に取り付き、自分の存在を気づかれないように獲物が巣にかかったと思わせる振動を送りながら、家主のクモに忍び寄る。それま一直線に近くのでなく、細心の注意を払いながら回り道して忍び寄る。

 

コオロギやケアシハエトリグモの脳が雄の声や家主の姿を認知、判断して、目的を達成するために最も効率的な計画を立案しそれに沿って行動している。と、虫の行動を擬人化して解釈することの胡散臭さに思い至らされる本です。

 

目や耳、皮膚などの感覚器官からもたらされる情報が脳に集まり、脳が認知、判断して、その結果に基づいて、身体へ指令を送りその通りに動く。そんな風に脳が全てを取り仕切ると考えなくても、脳のようなエネルギーをたくさん使う複雑な器官を使わなくても、もっと簡単な仕組みで昆虫や動物の複雑な行動を生み出すことができることを著者はたくさんの例をあげて示します。

 

蟻は、人間のような複雑な指揮命令系統を作って、コミュニケーションを取り人員配分を調整しながら餌を探索しているわけでない。匂いの道標をつけながら歩くこと。匂いの濃いところに集中すること。単純なこのルールだけで効率的に餌を集めているのだ。

 

脳至上主義に陥っていることに気づかされました。

野性の知能: 裸の脳から、身体・環境とのつながりへ

野性の知能: 裸の脳から、身体・環境とのつながりへ