脳外科医マーシュの告白

 仕事の中で、いろいろな心配事はあるけれどとにかくやるしかないという時、「まあ、誰かが死ぬわけでもないし、思い切ってやろうや。」と半分冗談で言うことがある。しかし、脳外科医の仕事は、ちょっとしたミスで患者が死ぬ、もしくは重大な後遺症を及ぼすことになる。

 

この本で、イギリスの脳外科医ヘンリー・マーシュは脳外科手術がうまくいったことも、うまくいかなかったことも全て赤裸々に語っている。功名心にとらわれ腫瘍を完全に取り去ってしまおうと無理をしたばかりに、手術の最中に脳の血管を傷つけてしまい出血が止まらず患者を死なせてしまったこと。比較的易しい脊椎のヘルニアの手術を、研修医に任せたら考えられないようなミスをして患者の神経を切ってしまったこと。そして、マーシュが責任者として患者に事実を伝えたこと。もう助かる見込みはないとわかっていながら、情にほだされ患者の願いを聞きいえれて無駄な手術をしてしまったこと。

 

人の生き死にに関わる手術を毎日何件もこなしていく緊張感と、助かる望みがないことを患者に伝えなければならない重圧感。マーシュは抑えた調子で淡々と語る。ミスはミスとして受け入れて正直に伝え、患者や家族の不満や怒りに正面から向き合い、さらに次の手術をやっていかなければならない。脳外科医は相当タフじゃなければ務まらないと思った。

 

等身大のお医者さんを知るために是非読んでみてください。

脳外科医マーシュの告白

脳外科医マーシュの告白