錆と人間 ビール缶から戦艦まで

 自由の女神、飲料の缶、戦艦や戦闘機、橋、アラスカの原油パイプライン。これらは皆、技術の粋を集め莫大な費用をかけて錆から守られている。アメリカにおける錆による被害額は年間40兆円以上とも言われる。人間と錆との戦いやステンレス鋼の開発の歴史、さらに錆の美しさに魅せられた写真家など、錆にまつわるあらゆることが登場する。

 

例えば飲料の缶は、中に入れる飲み物の成分によって缶の肉厚が違うし缶の内側をコーティングするエポキシ樹脂の成分や厚みも変えてあるそうだ。新製品の場合、飲料を缶に入れて数ヶ月放置して耐久性を確認するらしい。ビールやオレンジジュースはアルミ缶に優しい飲み物で、ある種のエナジードリンクはものすごく腐食性が強いそうだ。

 

アラスカの原油パイプラインでは錆を探知するために、ピグと呼ばれるロボットを総延長1300キロのパイプラインの中、原油の流れに乗せて走らせる。パイプラインが腐食し原油が漏れると環境への影響や原油の輸送に滞ることによる経済的損失は計り知れないためパイプラインの管理責任者の責任は重大だ。ピグの現在地を追跡するために一ヶ月間アラスカの原野を走り回る。

 

トタンは鉄を亜鉛でメッキしたもの。表面に傷がつくと亜鉛が先に錆びることで鉄を腐食から守る。ブリキは鉄を錫でメッキしたもの。錫は鉄より錆びにくく鉄を錫で外気から密閉することで腐食を防ぐ。

 

と、いうような簡単な技術的なお話もあるが読み物として気軽に楽しめる本です。

錆と人間 (ビール缶から戦艦まで)

錆と人間 (ビール缶から戦艦まで)