二宮翁夜話

 二宮尊徳が活躍したのは、19世紀前半頃。長年にわたる幕藩体制の矛盾がいろんなところで露見し、深刻な飢饉が2回もあるなど、農民の生活は疲弊していた時代だ。時代の状況が最近の日本になんとなく似ているような気がしたので読んでみた。

 

農村復興の手法を、誰にでもわかりやすく、実践できるよう具体的に書いている。あからさまなくらいに、わかりやすい。

 

まずは「分度」を守ること。分度とは、例えばある家の収入。田んぼが10反あれば、そこから収穫できる米の石高。その収入の範囲内で生活をしなさいと説く。次に分度の中で節約して少しでも余剰が出たら、無駄遣いしないで、将来のため、子供のため、村のため、国のために使いなさいと説く。これを「推譲」と言う。毎年、少しでも将来に向けて投資できれば、長期では圧倒的な差になると、複利の考え方も示しながら説く。

 

飢饉への対策も実践的だ。飢饉になりそうだとわかったら、まずは食料となる芋や大根などを空いた土地に植え付ける。いよいよ食料が欠乏してきたら、村全体にある米を買い上げるとともに、年少者や女性、老人を寺などに一箇所に集めて、一人、1日あたり米1合をおかゆにして4回に分けて与える。こうやって村全体の米の消費を節約する。一方で、体力のある男性には、給金を与えて田や畑の開墾作業や、食料となる蕎麦やジャガイモなどの植え付け作業、縄をなうなどの現金を稼ぐ商品生産を行う。こうやって、春に麦が実るまで耐えるのだ。開墾によって将来余分に収穫できる米などで、飢饉の時に使った給金を賄うことができるという。今で言えば、不況時に公共事業を多く発注する、財政政策だ。

 

能力がある人もない人も、どんな人でも食っていける方法を、実践しながら考えていく。今の世の中だったらどうするだろうか。

J-47 二宮翁夜話 (中公クラシックス)

J-47 二宮翁夜話 (中公クラシックス)