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生物から見た世界

他の生物にとって、この世界はどんな風に見えているのか。カタツムリ、ダニ、ゾウリムシなどの観察と実験をもとに解き明かしていきます。

 

例えば、カタツムリの目の前に1秒間に3回以上の頻度で棒を差し出すと、その棒の先に乗り移ろうとするそうです。カタツムリにとって1秒間に3回以上の出入りは識別できず、ずっとそこにあるものとして認識されるということです。人間にとって識別可能な頻度は1秒間に18回。光がそれ以上の頻度で点滅すると、ずっと点灯していると感じるそうです。視覚だけでなく聴覚や触覚など他の感覚でもその頻度は同じだそうです。また、ハエは1秒間に50回まで識別できるそうです。

 

つまり、カタツムリ、人間、ハエ、それぞれにとって時間の流れ方が違うのです。ハエの1秒は、きめ細かく認識できる分、長く感じれれているはずだし、カタツムリにとっての1秒は、人間よりも短いのです。

 

著者のユクスキュルは、生物それぞれにとって見えている世界が違うことを説明するため「環世界」という考え方を持ち出します。これは、生物は反射の積み重ねで動いている機械ではなく、環境を知覚して環境に作用を及ぼす主体(機械操作係)であり、主体が認識し作用する世界が、その主体にとっての世界の全てだという考えです。

なぜなら、主体が知覚するものはすべてその知覚世界となり、作用するものはすべてその作用世界となるからである。知覚世界と作用世界が連れだって環世界という一つの完結した全体を作り上げているのだ。

 

150ページほどの気楽な科学読み物で、記載されている具体例をたどるだけでも面白いですし、環世界という、現象学はじめその後の哲学者にも影響を与えた概念を示した本なので、オススメです。

生物から見た世界 (岩波文庫)