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昭和前期の青春

くノ一忍法帖などの忍法もので一世を風靡した、山田風太郎のエッセイ集。この前読んだ「戦中派不戦日記」が面白かったのでこの本を手に取った。

 

この本は、「戦中派不戦日記」に至るまでの風太郎の生い立ちや、生まれ故郷である兵庫県日本海側にある小さな町の思い出が綴られている。ちょっとしたことだけど、同年代の人たちにしかわからないような、出来事が丁寧に書かれているので当時の気分を知ることができて面白い。

 

例えば、子供向けの雑誌「少年倶楽部」を毎月心待ちにして、少年倶楽部が届くと木に登って、グミやナツメの実を食べながら読んだ、という話。私の年代だと、学研の教育雑誌「学習」と「科学」。特に「科学」には蓄音機や写真機など子供の心を鷲づかみにする付録が毎号あって、3日ぐらい夢中で遊んだ。あの付録を心待ちにするワクワク感を自分の息子に伝えようにも、なかなかわかってもらえない。また、祖父の家にはグミの木があったり、近所の空き地にあったナツメの木に登り、ナツメの実を食べたことがあるので、ふふーんと思えるけれど、グミもナツメも見たことがない子供たちに、グミの甘酸っぱい味や、ナツメのサクサクした食感やほのかな甘みを伝えるのは至難のわざだ。

 

なんでもないことは、なんでもないだけに時代が変わると忘れ去れれてしまい、後から掘り起こすのは難しい。日記はそんな細かい時代がの気分を掘り起こす手がかりになる。しかし、人には見せるつもりがない昔の日記と、人に見せる前提で書いている今のブログとでは、書き込まれる内容が違ってくると思う。人に見せる前提だと当然だがあまり尖ったことは書きにくい。匿名にしても読まれることを意識すると微妙に書き方が変わるように思う。

 

大正11年に兵庫県の田舎町で生まれて、敗戦を23歳で迎えた年代が、どんな気持ちで彼らの青春時代、つまり昭和6年の満州事変からの十五年戦争を過ごしたかを知りたい人ににオススメです。

昭和前期の青春 (ちくま文庫)