死すべき定め 死にゆく人に何ができるか

父は8年前に肺癌で亡くなった。6月の終わり頃に腰の骨を骨折して入院している時に首回りのリンパ節の腫れに気がついて念のためということで検査したら、末期の肺がんであることがわかった。先生にはもっても3ヶ月から6ヶ月でしょうと言われた。8月くらいまでは本当に癌なのかと思うくらい普通に暮らしていたけれど、病気が進んだためなのか、抗がん剤放射線治療の副作用なのか9月以降はどんどん弱っていった。10月に一度家に帰ったけれど、2週間後に辛くて耐えられないということで再入院。12月4日に亡くなった。

 

今でも後悔していることが2つある。一つは、父もまだ元気で自分で病気についてネットでいろいろ調べていた時に、代替医療を試してみようかなと言ったことがあった。私は代替医療はお金ばかりかかってあまり効果がなさそうと思っていたので、曖昧な返事をしてやり過ごしてしまった。賢い人だから自分に望みがないことはわかっていて、それでも藁にもすがる思いで言ってたのだろうに素っ気なく受け流してしたのだ。二つ目は、癌なのだからそういう治療するのが当たり前だろうと2回目の抗がん剤治療を受けたこと。1回目で全く効果がなく、しかも体にダメージを受けて衰えたのを見ていながら2回目に進んだ。受けなければもう少し元気なまま過ごせた時間が長かったのではと今でも時々思い出しては悔やんでいる。

 

この本は、医師である著者が自分の義理の母や父親の死に向き合いながら、幸せに死を迎えるかにはどうすればいいのか考えていく本です。人はいつか必ず死ぬ、死すべき定めであるにも関わらず、死んでいく人に何ができるかについては、そんな状況になって初めて考えることになる。お医者さんも病気を治療することを考えるが、死んでいく人が安らかに暮らすためにすべきことについてはあまり詳しくない。

 

老いて一人暮らしができなくなった母親を施設に入れたこと、癌で死にゆく父親を本人の希望を受け入れてギリギリまで自宅で過ごさせたこと。著者の体験も織り交ぜながら、死に行く人に何ができるかを考えていく。

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか