移民の運命 同化か隔離か

イスラーム世界の論じ方」の中で、池内恵さんが言及していた本。

 

著者のエマニュエル・トッドは人類学者で、フランスの国立人口統計研究学院資料局長。

 

移民がどのように受け入れられるかは、受入国側と移民側それぞれの社会システムによって決まる。社会システムというのは、家族制度のこと。つまり兄弟が平等に親の遺産を相続するのか、長男が全て相続するのか。女性の地位は強いのか、弱いのか。父親の権威が強いのか、弱いのかなど。

 

フランスは、普遍主義(=人種や民族を超えて、基本的に人間はみんな平等という考え)の国で、北アフリカからであれ、黒人であれ、アジア系であれ、移民と結婚して何世代か後には同化してしまう。これは兄弟が平等に相続するという家族制度から、人は平等という考えが基底にあり、移民ともこだわりなく結婚できることによる。ラテン系の国、ロシアや中国もこのタイプ。

 

一方、イギリスやアメリカは、差異主義(=人種や民族によって人間は違うという考え)の国。親の遺言によって誰がどう相続するかが左右されることから、人によって違うという考えが基底にある。受け入れ国側において、移民が違う種類の人と認識されると、婚姻関係を結ばれることなく、民族として隔離されることになる。ただ、違いをそのまま受け入れてくれるので、社会の中で移民コミュニティを作ることを容認する。

 

ドイツや日本は、長男だけが相続し父親の権威が強い国。差異主義であり、移民は自分たちと違うということで、差別や排斥しようとする動きが出やすい。

 

家族制度が、それぞれの社会における根本的な人間に対する見方を決定していて、そこから移民に対する態度も決まる。これは私にとって初めての考え方。非常に興味深く読めた。

移民の運命 〔同化か隔離か〕