夜明けの約束

著者のロマン・ガリは、1914年にリトアニアユダヤ人の両親のもとに生まれる。父親はロシア軍に入隊し、母ひとり子ひとりの家庭で育つ。12歳の時にワルシャワへ引っ越し、14歳の時に母ともどもフランスに帰化する。第2次世界対戦では自由フランス軍に参加し航空士として働く。戦後、フランスの外交官として活躍し、国連代表やロサンゼルス総領事を務める。戦争中から小説を書き始める。1958年に「勝手にしやがれ」で有名な女優ジーン・セバーグと出会い結婚する。1970年に離婚するまで夫婦として過ごす。1979年に、ジーン・セバーグがパリの路上の車の中で遺体となって発見された1年後、「夜明けの約束」の決定版を刊行し、パリの自宅でピストル自殺。

 

この経歴を見ただけで、ロマン・ガリってどんな人なのか興味湧いてきませんか。

 

この「夜明けの約束」はロマン・ガリの自伝的小説。戦争の足音が忍び寄る中、なんとか息子を移住先のフランスで立派に育てたいという母親の息苦しいくらいの愛情。その愛情になんとか応えようと苦闘するガリ。二人のそんな半生がつづられる。

 

人目をはばからない母親の愛情に振り回されることって、男性なら程度の差こそあれ、思い当たる節はあるだろう。身寄りのない異国でたった一人で息子を育てなきゃいけないとなれば、なりふり構わず息子を大事にしよるとするのは当然かもしれない。桁外れの母親の愛情と、それに振り回され迷惑に感じながらも、母親を受け入れざるを得ない息子。母子のそんなすったもんだが、悲しくもユーモラスに書かれている。

 

フランスとアメリカでベストセラーになっただけあって、読み始めるとグイグイ引き込まれた。カリフォルニアのビッグサーの海岸でアザラシと対峙しながら、昔を思い出すという設定もまたいい。人里離れたビッグサーの荒涼とした風景が目に浮かぶ

 

夜明けの約束 (世界浪曼派)