BORN TO RUN 走るために生まれた

メキシコの山岳地帯にタラウマラ族という、超長距離を走ることが得意な民族がいる。急峻な山道を何10キロも軽やかに駆け巡る。村のイベントとして走ることもあるし、鹿を持久走で追い詰めて仕留めることもあるそうだ。

 

そんなタラウマラ族とアメリカの一流のウルトラマラソンのランナーがメキシコで50マイルのトレイルランニングで対決するまでのお話がこの本の縦糸。それに人間がいかに超長距離走に向いているかという話や、カバーヨ・ブランコと呼ばれるアメリカ人の元ボクサーが走る為にタラウマラ族が住んでいる地域に住み着く話が横糸として絡む。

 

馬や鹿よりも人間の方が速いというのは驚いた。確かに5キロや10キロでは全くかなわないが、50キロ、100キロとなると動物は体温が上がりすぎて走れなくなるそうだ。人間は毛に覆われていなくて汗で冷却できるので、水分さえ補給できればずっと走り続けられるそうだ。今はほとんどなくなってしまったが、世界各地で何時間も持久走で追い詰めて草食動物を仕留める狩の方法があったそうだ。

 

タラウマラ族もウルトラランナーも何キロ走ったとか、何時間走ったとか測れる数字でなくて、自分の体と対話しながら楽しんで走っている。著者に「楽に、軽く、速く」走れ、余力を残してどこまでも走れるペースで走れ、とアドバイしていたのは印象的。早速、自分でも胸や股関節の力を抜いて、呼吸も楽にすることを意識して走っている。

 

自分を追い込むだけでなく、走ることの楽しみに目を向けさせてくれる一冊です。