失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

 最初から完璧を目指して準備に時間をかけるよりも、そこそこのところで実行して、早めに失敗して改善した方が進歩は早いというお話。もちろん、失敗の原因を詳細に分析、フィードバックして改善に繋げる仕組みを持つことが前提で、そのような失敗から学習する仕組みがあるかないかでその後の成果が全く違ってくる。

 

失敗から学習する組織は、航空機業界、自転車のロードレースのチームスカイ、メルセデスのF1チームが挙げられている。一方、学習できない組織は、医療、心理療法の業界。

 

航空機事故が発生すると、ボイスレコーダやフライトレコーダの記録を詳細に分析し、パイロットの人為的なミスだとしてもそのミスを犯すに至った周囲の状況、本人の健康状態、機体の状態にまで遡って原因を調べる。その事故で判明した事故の原因は、航空業界全体に共有され、機体の改良やオペレーションの改善に繋げる。その結果、航空機事故は年々減少し、なんと2017年のジェット旅客機の墜落事故はゼロになったそうだ。

tabiris.com

 

それと対照的なのは、医療の世界。医療事故が発生すると、まずは医師や看護師さんがミスを犯したのではと、個人の責任が厳しく問われ、仕組み全体としての原因究明がおざなりになる。その結果、まず事故を隠そうとする。原因が組織や業界全体で共有されることがないので、同じミスがなんども繰り返される。本書では医療ミスによる死亡者はアメリカだけで年間何万人にもなるのではないかと推測している。

 

特定の会社や個人をやり玉にあげて、必要以上にみんなで袋叩きにするのは、ミスを隠す方が得だといく気持ちにさせるので、社会全体としてもあまりいいことなさそうです。

失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

 

 

マシュー・サイドが書いたものでは、この本も面白かった。

benton.hatenablog.com