ヒトラー(上)1889-1936 傲慢

 上巻が607ページ、下巻が863ページ、しかも2段組の大著。

 

ヒトラーが史上稀に見る極悪人で、ヒトラーが全部悪い。ヒトラーさえいなければあんなことにならなかった。」と考えるのか、「ヒトラーがいてもいなくても変わらなかった。時代の状況であんなことになったのだ。」と考えるのか。

 

著者は、そのどちらでもなくて、ヒトラー個人の資質と時代の状況が絡み合って歴史が動いたと考えます。そして、個人の資質と時代状況の絡み具合を丹念に再現していきます。丹念に描くとこれくらいの分量になるんでしょう。

 

上巻はヒトラーが生まれた1889年から絶対的な権力を確立した1936年のラインラント再武装までを辿ります。

 

読んでいて怖いと思ったのは、ナチスが突撃隊によるテロをちらつかせたとはいえ、合法的な選挙で全権委任法を成立させて独裁体制を確立させたこと。勇ましいことを言って人気取りをしてしまうと、その期待に応えて支持者を繋ぎとめておくために、言うことがどんどん過激にならざるを得なくなってしまうこと。そして一旦その流れができてしまうと、トップが指示しなくても、まわりが勝手にトップの意を汲んで急進化して行くこと。

ヒトラー(上):1889-1936 傲慢

ヒトラー(上):1889-1936 傲慢