最後の天朝 上 毛沢東・金日成時代の中国と北朝鮮

 近年、ロシアや東欧諸国、中国、アメリカで公開されはじめた公文書を元に、1945年からの中国と北朝鮮の関係を掘り起こしていく。関係者の個人名や地名が詳細に記されていますが、その辺を適当に読み飛ばしても読み物として大変面白い。

 

なるほどと思ったのは、

  • 1920年から1940年ごろの中国の共産主義運動の中で、朝鮮の人々が重要な役割を果たしていたこと。日本の植民地の朝鮮から、中国へ多くの人が逃れて共産党に加わって党の幹部となっている。
  • 日本の敗戦後に、共産党中国東北部をめぐって国民党と戦っていく上でも、東北部に住む朝鮮人たちが共産党の根拠地を確立する手助けをしている。なにしろ、中国共産党は、日中戦争中は内陸部の延安に根拠地を構えていたため、東北部には全く手がかりがなかったのだ。また、ソ連の後ろ盾を得ていち早く北朝鮮に入った金日成が、物資の補給、軍隊の移動、休養に関して中国共産党にとってなくてはならない存在だった。
  • 朝鮮戦争、戦争後の復興においては、中国は大規模な義勇軍を投入した上に、経済的にもソ連を上回るくらいの身の丈以上の巨額の援助をしている。それにも関わらず、北朝鮮は中国よりもソ連の顔色を伺う。
  • ソ連は、アメリカと真正面から対立することを恐れて、国民党と戦う中国共産党へも、朝鮮戦争時の北朝鮮へも直接支援しない。一歩下がって側面支援にまわる。

 

米朝首脳会談を間近に控えて、朝鮮半島情勢の「そもそも」をおさらいするにはうってつけの本です。

最後の「天朝」――毛沢東・金日成時代の中国と北朝鮮(上)

最後の「天朝」――毛沢東・金日成時代の中国と北朝鮮(上)