意識と自己

意識はどうやって発生したのか。自己という認識はどこからくるのか。科学最大の課題のひとつに挑む。

 

著者は意識の根元には「情動」があるという。単細胞生物から人間にいたるまで生物には外界からの刺激を受けた時に、命を脅かすものであるのか、それとも命を維持するために必要なものであるのかを判断する。判断の基準は、体内の環境を一定に保とうとするホメオスタシスの。体内環境を一定に保つ上で脅威になるものからは離れる。役に立つものには近く。意識がない状態で生物は、それを瞬時に判断するそうだ。

 

情動が繰り返されることで、生物と外界の対象との間の関係がパターン化されて記憶される。生物の元の状態に対象からの刺激が作用して、違う状態に変化する。その変化が繰り返されると、自己と外界を関係付ける意識の元が生まれるという。著者はこれを中核意識と名付ける。

 

目が覚めている間はずっと、人は外界からの刺激を受け続けていて、意識下でその刺激を「良い」、「悪い」で判断をし続けている。

 

意識の起源が、意識の前段階で行われている価値判断というのは、仏教の十二縁起と似ている。仏教では苦が生じる流れを、「十二縁起」で表す。外界からの刺激に対する無意識下の反応がある。それが活性化して意識されるようになる。すると、その価値判断にとらわれる。何度も思い出す。そこから苦が生じるという。

 

意識については、いろんな本を読んでみてもよくわからないのだけれど、考え続けずにはいられない。

意識と自己 (講談社学術文庫)

意識と自己 (講談社学術文庫)