スハイリ号の孤独な冒険

 1968年に世界で初めてのヨットの単独無寄港世界一周レースである「ゴールデングローブレース」が開催された。イギリスを出発して喜望峰、オーストラリア、ニュージーランド南側を通って、マゼラン海峡通過後は大西洋を北上してイギリスに戻るコース。GPSは存在していない、原始的な自動操縦装置しかない時代ということもあり、参加した9艇のうちゴールしたのは1艇のみという過酷なレース。このレース全体については”VOYAGE FOR MADMEN"が詳細に綴っている。

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この「スハイリ号の孤独な冒険」は、ゴールデングローブレースでただ1艇ゴール(=優勝)した、ノックス ジョンストンがその単独航海の準備段階からゴールまでを記した本。写真、挿絵が豊富なので本文を読みながらヨットの各部分の名前や地図を確認しながら読める。巻末にはヨットに詰め込んだ食料や装備品のリストまで収録されているので、自分が航海するような気分に浸れる。食料は缶詰と乾燥したフルーツ、小麦粉が多い。ライムやレモンジュースの粉末やビタミンを補うサプリメントも携行している。

 

ノックス ジョンストンは、イギリス人の航海士。本当は、このレースのために新艇を建造して参加したかったのだが資金調達できなかったため、止むを得ずインドで建造してイギリスまでの航海に使ったスハイリ号に簡便な自動操縦装置をつけて参加する。

 

海の上は一人でのんびりできるのかと思いきや、結構忙しいようだ。もっとも効率的に走れるように、帆を上げたり下げたり。航海が進むにつれて、ヨットのいろんなところが壊れてくると修理しなければいけない。天候が安定しないとまとまって睡眠を取ることもできない。特に、喜望峰からマゼラン海峡までの南氷洋の航海は荒天との戦い。激しいうねりと風に常に悩まされる。

 

この本は、古本屋さんを物色している時にたまたま見つけ、もしかしたらゴールデングローブレースと関係あるのではと思い手に取ったら当たりだった。過去に自分が読んだ本に関連する本を思いがけず見つけることができた。これだから古本屋さんパトロールはやめられない。 

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