玉ねぎの皮をむきながら

 ドイツのノーベル賞作家ギュンター・グラスが、子供時代から代表作「ブリキの太鼓」を書き上げるまでを回顧する。この本が出版された2006年にグラスは第2次世界大戦の末期にナチス武装親衛隊員だったことを告白して、マスコミで大騒ぎになる。この本でも親衛隊員だったことが語られる。

 

ナチスの時代に、反ナチスの言動をした教師が、ある日突然いなくなる。そんなことがあっても、グラス自身も含めて誰も声をあげない。見て見ぬふりをする。何度も同じようなことが続くうちに、国全体がナチス一色になってしまう。「何かおかしい。」と思った時に、沈黙してしまったことをグラスは悔いる。戦後もずっと重くのしかかる。

 

「私の名前を持った少年が、その時◯◯した。」というような、著者本人の語りのはずなのに、3人称での語りが混在する。ボッっと読んでいると誰が誰のことを説明しているのかわからなくなる。また、時系列に回顧した内容が並んでいるわけでなく、時代が進んだり、元に戻ったりするので、わかりにくい。何回か読み返さないと頭に入ってこない。しかし、つまずき、立ち止まり、読み返すうちに、この本のリズムに馴染んで、本の中に没入していくようになる。ゆっくりじっくり読むべき本なのだ。

 

ドイツ人にとっての第2次世界大戦の時代の肌触りをうかがい知ることができます。

玉ねぎの皮をむきながら

玉ねぎの皮をむきながら