行動経済学 経済は感情で動いている

経済学では、人は、合理的であり、かつ利己的であることを前提にしています。
それは、こんな人です。

禁煙や禁酒やダイエットに失敗するなんてありえない。しょっちゅう電車の中に傘を忘れたり、ダブルブッキングをして友人を不愉快な気持ちにさせたり、あたるはずのない宝くじを買ったりしない。


経済学は超合理的で利己的な人(経済人)を前提とすることで、経済事象のモデル化、数値化が可能となったのですが、行動経済学は、このような、従来の経済学での経済人の前提と現実の人との違い明らかにして、そこから経済事象を分析する学問のようです。


以下、本書の中の「ヒューリスティクス」に関する内容のまとめてみました。

人は、確率や頻度に関する判断を下すときには、全ての情報に基づいて、合理的に判断しているのではなく、簡便法(ヒューリスティック)によって直感的に判断している。そのことによって、判断にバイアスがかかることがある。


ヒューリスティクスには、「利用可能性」、「代表性」、「アンカリングと調整」、「感情」がある。

  • 「利用可能性」とは、ある事象が生じたと容易にわかる事例(最近の例、顕著な例)を思い出し、それに基づいて判断すること。  →連言錯誤、後知恵バイアスが生じる
  • 「代表性」とは、ある集合に属する事象が、その集合の特性を表していると考えて、頻度や確率を判断すること。  →少数の法則、基準率の無視のバイアスが生じる。
  • 「アンカリングと調整」とは、予測するときに初めにある値(アンカー)を設定し、そこから微調整して最終的な判断をすること。  →最終的な予測値が、最初に設定した値に引きずられるバイアスや確証バイアスが発生する。
  • 「感情」とは、人はまず、ある事象に対して、好きか嫌いかを直感的に判断して、選択肢を絞り込んだ上で、最終的な判断を意識的に行う。  →判断が感情に引きづられる。


ヒューリスティックスは、様々な判断の誤りの原因となることもある。しかし、だから人間がアホだ、というのではなく、限られた情報量、時間の中である程度満足のいく判断を下すための知恵である。→「急がば回れ」「初めちょろちょろ中ぱっぱ」のようなもの。
また、最近は、脳神経科学者によって、そもそも感情が無いことには、判断、決定ができないといことも明らかにされている。病気やケガによって、知力は正常であるにもかかわらず、脳の感情を司る部分が破壊された人が、判断や決定できず日常生活を送れないという研究がある。


「感情に流されるな」とか「情に溺れるな」とかいうけれど、逆に感情が全くないと、判断や決定ができないというのには驚きました。直感とか、虫のしらせって、意味があるんですね。


行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)

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