ルノワールは無邪気に微笑む
朝日新聞の読者から寄せられた質問に、筆者が答える形で芸術について語っていきます。この本の中で、千住さんが何度も言っているのが、
芸術とは自分のイマジネーションを何とかして他者に伝えていこうとすることです。
イマジネーションを伝えるというのは、音楽も、文章を書くことも、料理も、更には仕事も一緒だと思いました。自分のアイディアを書類や、会議、プレゼンテーションで何とかして人に伝えるのが仕事の第一歩です。自分のアイディアがはっきりしているときには、データを集めたり、書類を準備するのも時間を忘れて熱中してできます。
アメリカと日本の美術大学の違いが面白かったです。日本の大学は、基礎的な技術をもっているかどうかで入試をふるい落とされますが、アメリカは、その人が伝えたい何かをもっているかどうかがポイントだそうです。技術は大学に入ってから身につければいいという考え方のようです。入ってからも、伝えたいものを表現するために必要であれば、絵画から彫刻へ専攻をかえることもできるそうです。
画家になりたいのなら、何としても舞台に上がり続けることです。つまりどんなに失意の連続だったとしても作品を公に発表し続けることです。発表という場数を踏めば踏むほど、舞台が大きければ大きいほど、とにかく少しずつでもよくなっていくものです。芸術とはコミュニケーションの一種ですから、こうやってひとの目に触れるなかで初めて見出されてゆくのです。
しつこく人に伝えようとすることが、なによりも大事なようです。私には、しつこさがもう少し必要かもしれません。
ルノワールは無邪気に微笑む―芸術的発想のすすめ (朝日新書)
- 作者: 千住博
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/10
- メディア: 新書
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