はやぶさ
日本の小惑星探査機はやぶさと、それを生み出した宇宙研のお話。
「はやぶさ」のことは、小惑星イトカワに着いた頃は結構新聞に載っていましたが、その頃は全く興味なかったので、この本を読むまでは全然知りませんでした。こんなにスゴイことをやっていたとは。
一番遠いところでは、3億キロかなたにある小惑星に探査機を飛ばして、そこに着陸して土壌のサンプルを採取して、再び地球に戻ってくる。3機ある姿勢制御装置のうち2つは壊れ、化学スラスタも使えない。満身創痍になりながら、今も地球に向かって飛んでいる。うまくいっているかと思えば、どこかが壊れて、もうダメかと思えば、別の手を考え出してなんとかする。はやぶさの動きを追っているだけで、ハラハラどきどきします。
こういうものは、送られてくる映像をみながら、地球からラジコンのように操っているのかと思っていましたが、考えてみれば、電波が届くまでに何分もかかるような遠くのものの場合タイムラグがありすぎて、着陸のような細かい制御は無理です。探査機自体が、自分でいろんな状況を判断して自律的に着陸するそうです。
はやぶさのお話も面白いですが、それを生み出した宇宙研という組織の歴史も面白かったです。日本の宇宙開発には、2つの流れがあります。
- 糸川英夫氏のペンシルロケットに始まる、日本独自技術である固体燃料ロケットで、学術探査衛星を主に打ち上げている、旧文部省、東大系列の宇宙研究
- アメリカから導入した液体燃料ロケットを起源として、実用衛星を種子島から打ち上げる、旧科学技術庁系列のNASDA
です。
大きなロケットで華々しく実用衛星を打ち上げるNASDAに比べると、宇宙研は、予算も少なく地味な存在だったようです。その少ない予算でどうやって「はやぶさ」のような成果を上げることができるのか?海外の研究者から見ると、はやぶさには、びっくりするくらい少ないお金しかかかっていないそうです。鍵は、理学と工学のような専門の壁、セクションの壁を乗り越えて議論することと、自分の頭で考えぬいた技術を積み重ねていく風土のようです。
去年、金沢でも宇宙関連のイベントではやぶさの模型が展示してあって私も見に行ったのですがあまり注目していませんでした。今なら、説明員の人と手を取り合い、涙をながして喜びを分かちあいたいくらいです。もっと詳しく見ておけばよかった。
- 作者: 吉田武
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