世界でもっとも乾いた土地

チリ北部の砂漠地帯は一滴の雨も降らない世界で最も乾いた土地。そこを、チリの作家アリエル・ドーフマンが旅するお話。


砂漠の真ん中にある天文観測所や、かつて繁栄を極めた硝石鉱山の跡、ピノチェト政権下で銃殺された友人が収容されていた刑務所の跡地を訪ねます。人を寄せ付けない砂漠に住む人たちの、訳ありの歴史をたどる旅です。お隣のアルゼンチンも同じですが、ヨーロッパやアメリカからの、一攫千金を夢見てわたってきたひとや、母国で食い詰めたひと、亡命者などが織り成す独特の雰囲気があります。


地球の裏側のチリ、砂漠、廃墟。普通に暮らして一生行くことなさそうですが、旅情をそそられます。


印象に残った部分。天文観測所で働く友人と夜空を見ながら話す場面で、

するとミゲルがもう一度言った。まるで子供におとぎ話を一言一言語って聞かせるように、どうやってすべてが始ったか、どうやって百五十億年前、宇宙が生まれた瞬間に作られた原子が分子雲を形作り、そこから星へ、そして星から銀河への形を変えていったかを話してくれた。彼は「その分子が砂漠や君や私たちを作っているのと同じ分子なんだよ」と話してくれた。

「われわれは小さな星のかけらなんだよ」

世界で最も乾いた土地―北部チリ、作家が辿る砂漠の記憶 (ナショナルジオグラフィック・ディレクションズ)

世界で最も乾いた土地―北部チリ、作家が辿る砂漠の記憶 (ナショナルジオグラフィック・ディレクションズ)