学校を卒業して最初の10年はメーカーの経理部で原価計算をやっていました。


工場で製造する製品が1ついくらになるかを計算する仕事です。経理というと定型的な決まりきった仕事の繰り返しというイメージがありますが、原価計算は数字を作る仕事です。製品がいくらで出来るかは、考え方によって何通りもの計算の仕方があるので、その中から経営の目的に合った方法でシステムを設計していきます。自分が値段をいくらにするかを決めているくらいの気構えで仕事してました。


その分仕事はハードで、プレッシャーが大きく、毎日頭が熱くなるくらい考えていて、朝起きると吐き気がして気持ち悪い時期もありました。ぼやぼやしていると、製造現場のおじさんに怒鳴られるし、設計部はうるさいこといってきます。原価計算は製造ラインも設計も人事も情報部門も全部関係してくるので、何をやるにもスケジュール調整が大事な仕事でした。喧々諤々、どなりあいも交えて議論して日程についてみんなの合意を得てからスタートです。


みんな、厳しいこと言う人ばかりでしたが、一旦決めた締め切りは絶対に守ってくれました。一度受けた仕事の納期は絶対に守るというのが掟です。逆に言うと、できない仕事は安易に引き受けないということです。


今の職場との一番の違いが、この締め切り(納期)に対する姿勢の違いです。仕事を頼むと、みんな結構いい顔して引き受けてくれるのですが、ずるずる遅れることがあります。なぁなぁでやるというのでしょうか。できないなら最初から無理、ダメ、できないって言ってくれればいいのにね。あやふやにしておいて土壇場になって破綻するパターンで何回かやられました。こうなると、みんな「鯖を読む」ことになります。あっちで1日、こっちで1日と鯖が積み重なると末端ではとんでもない非常識な締め切りになります。鯖が読んであると思うと、締め切り守らなくてもいいかという気分になって、鯖を読んで・・・・と悪循環に陥ります。


こんな状況、組織としては非常には困ったものですが、中に入り込んでしまうと結構心地よかったりするのが曲者です。