築地

アメリカ人の人類学者が記した、築地、東京中央卸売市場についての民族誌


水産物の取引ルート、商品ごとに異なるせりの仕組み、市場の歴史、市場を構成する各プレーヤーの関わり合い、仲卸業者間の関係、グルメブームなどの食文化の変化や、冷凍技術や運搬技術の進歩と魚取引の変化についてなど、築地を、社会的枠組み、文化的背景、経済取引が互いに絡み合って環境の変化に対応していく、「生命体」のようなものとして描いています。


築地が現在のような築地であるのは、社会的な枠組みや歴史・文化的な文脈、場所の特殊性から切り離すことはできないと著者はいいます。

市場の運営をその場所と切り離して理解することはできない。もしも、築地が、都市部の端の端、高速のインターチェンジ近くの畑の真ん中に−広大な駐車場に囲まれた倉庫街に位置していたら、初めから全く違った場所になっているはずだ。

郊外の大きなショッピングセンターは、車で行くには便利なので私も利用しないわけではないのですが、暇つぶしにブラブラしようという気にはなれません。それは、どこかの社長さんが「狐や狸が出るような場所に、お店を作れ。」と言っていたように、場所の特殊性を無視して全国何処でも同じだからかもしれません。何年かすると、土地の文化的背景を取り込み、面白い場所になっていくのかもしれませんが、今のところはオープンした時が一番新しくて魅力的、後は古くなるばかりという印象です。


古くからの市街地が、郊外のショッピングセンターと張り合えるとすれば、場所の特殊性、文化的背景との相互作用で自らがどんどん変わっていけることではないでしょうか。

築地

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