三四郎

熊本から上京し大学にはいった小川三四郎さんが、物理の研究者である知り合いの野々宮宗八さんの妹のよし子さんの友達の里美美禰子さんのことが好きになり、何度か会ってお話したものの、美禰子さんは別の人と結婚することになってしまったというお話。

登場人物それぞれが個性的。当時の典型的な人物像を代表しているのだろうか。地下室にこもって物理の実験に没頭する野々宮宗八、一歩引いて冷めためで世の中を批評する広田先生、自分の欲望に正直に行動する友達の佐々木与次郎、上流の華やかな世界にいて、進んだ女性代表の美禰子さん、田舎から出てきたばかりの三四郎は彼らと付き合いながら、東京の生活になじんでいく。

当時の東京の町名や電車の経路など細かく描写されています。野々宮さんの住んでいた百人町へは甲武電車=今の中央線に乗って行くのですが、あたりは全くの郊外で田舎の雰囲気だったようです。地図と照らし合わせながら読むと面白いかもしれません。広田先生の家のように、座敷と縁側があって下女と書生が住んでいるような屋敷に少しあこがれます。訪問して本人がいなかったり昼寝していても、勝手に上がりこんで待っているのが今と違っておおらか。

三四郎 (新潮文庫)

三四郎 (新潮文庫)