コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった
経済のグローバリゼーションを裏で支えているのが、コンテナによる低価格の物流です。コンテナの発明によって、どのように海運業界が変わり、製造業、小売業にどんな影響が及んだのか、1956年に初めてコンテナが実用化されてからの動きを丁寧に説き起こします。
コンテナ以前の混載船での輸送では、船への積み込みや荷降ろしに非常に時間がかかるだけでなく、沖仲士により手作業で大変高コストでだったようです。港での積み下ろしの費用が、輸送費全体の半分を占めていました。コンテナにより機械化が進み、積み下ろしのコストは劇的に低減されます。
最新の通信技術とコンテナ輸送で武装した小売業は、オリジナルデザインのシャツを企画し、アメリカ産の綿花からつくられた中国製布地を使ってタイの工場で縫製し、日本製ファスナーと台湾製樹脂を使ったマレーシア製ボタンとを取り付け、インドネシアに送って刺繍まを施す。そして、できあがったシャツを四十フィート・コンテナに詰め、テキサスのショッピングモールやフランスのデパートで売る。グローバルサプライチェーンとうものが当たり前になったのである。
こんなことが可能になったのも、コンテナ輸送により海外との物流コストがほとんど無視できるくらい安くなったからです。
コンテナを世界で最初に実用化したのは、アメリカのマルコム・マクリーン。彼がトラックの運送会社経営から海運に進出し、既存業者や政府、港湾労働者の組合の抵抗を克服しながら、コンテナ船を実用化する過程は、革新的な変化をもとらすことの大変さと、一旦軌道にのったイノベーションのもたらす変化の大きさを見せつけます。1956年から1967年までの10年間はニッチ的な存在でしかなかったコンテナが、その後の10年で、あっという間に世界の海運業界を根底から変えてしまいます。
- 作者: マルク・レビンソン,村井章子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
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