ユーザーイリュージョン　意識という幻想

マックスウエルの悪魔、ゲーデルの不完全性定理、エントロピー、複雑系、ガイア、いろんな話が出てきてテンコ盛り、５００ページもありますが読みやすい。意識とはなんだろうというお話。

一番印象に残ったのが、意識の帯域幅の狭さ。

毎秒１，０００万ビットを超える情報が感覚器官を透して脳になだれこんでいる。しかし私たちの意識が処理するのはせいぜいが、毎秒４０ビット。脳は、膨大な情報を解釈し、必要なものを抽出し意識にのぼらせる。しかも、感覚器官から入ってくる情報を処理して意識にまとめあげるために必要な時間が０．５秒。我々は０．５秒前の世界を見ている。椅子の上の画鋲を踏んで、０．２秒後には無意識に身体は反応しているけれど、「痛っ！」と意識するのは０．５秒後。脳はこのタイムラグを補正して同時に反応しているように感じせせる。単純に腕を曲げる動作をする場合にも、脳の腕の筋肉を動かす領域が反応してから、０．３秒後に腕を動かそうと意識する、その０．２秒後に腕が動き出す。自分の動きをいちいち意識してやってたらスポーツは出来ない。

意識して見たり聞いているものが世界そのものではない。意識するから身体が動くわけでもない。無意識で処理した情報や、無意識に反応した結果をよりすぐったエキスのようなものが意識にのぼってくる。意識は広大な無意識の領域を部分的に照らし出すスポットライト。

意識の領域は、「言葉」と切り離して考えられない。意識＝言葉の世界が全てだと思うと、無意識の領域を切り捨てることになる。「本ばっかり読んでると、アホになる。」というのは、確かにその通りなのかもしれない。