砂 文明と自然
「砂」に関するありとあらゆることが書かれています。砂だけでこんなに書くことあるのか思うくらい多様な側面から砂について書いています。
目次
序章
第1章 砂つぶの生い立ちと性質
第2章 砂が集まる不思議な世界
第3章 砂が連想させるもの
第4章 川から海へと旅する砂つぶたち
第5章 波、潮流、ハリケーンにもまれる砂の旅
第6章 風に吹かれてできる砂漠
第7章 過去を証言する砂
第8章 砂が連想させるもの 伝承と芸術
第9章 人の生活の中で活躍する砂
第10章 地球を越えて、時間を越えて
エピローグ ツタンカーメンのさばくガラスの謎
第2章は、砂つぶの集団としての不思議なふるまいについて分析します。砂山で遊んだ実体験と理論を照らし合わせながら読みすすめることができて面白い。
乾いた砂で砂山をつくると、あるところで崩れるので、砂山を大きくしていっても砂山の形(=砂山の傾斜)は変わりません。崩れたあとの傾斜角を、安息角。崩れる直前の傾斜角を安定角というそうです。安定角の状態にある砂山に、一粒でも砂を落とすとなだれが発生し、安息角に落ち着きますが、そのとき発生するなだれの規模は、小規模なものから、砂山の半分が崩れるような大規模なものまで、どんな規模で起こるかは予測不能。ただし、全体はべき乗則に従って分布するとのこと。
砂遊びをしたことがある人なら、「ははぁーん。」と思いませんか。その他、異なる大きさの砂粒が混ざったものに振動を加ると分離する「ブラジルナッツ現象」も面白い。軽くて大きな粒が上に浮かんでくることが多いような気がしますが、粒の密度や振動の加え方によっては、軽くて大きな粒が沈むこともあるそうだ。そして、その個々の粒の振る舞いは、今のコンピュータ技術をもってしても、モデル解析ができないそうだ。また、砂と水の混合物に、振動を加えるとと液状化したり。急激な動きを加えるとその周りが固体化(ダイラタンシー)したりと、砂の振る舞いは確かにおもしろい。
第9章は、生活の中の「砂」を紹介していく。コンクリートの材料として欠かせないのは勿論、半導体製品の原材料は砂の主な成分であるシリコン(ケイ素)。シリコンウエハやインゴットになったものは見たこと歩けど、その原料は何処から来るのでしょう。著者は、メーカーや業界団体に問い合わせたり、文献にあたって調べてみますが、企業秘密の壁にぶちあたり、わからずじまい。地中深くの熱と圧力で石英砂から不純物が取り除かれ岩となった、珪岩ではないかと推測します。
とにかく、砂のことならなんでもかんでも、これ1冊で。
- 作者: マイケル・ウェランド,林裕美子
- 出版社/メーカー: 築地書館
- 発売日: 2011/07/29
- メディア: 単行本
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