ユーロ危機と超円高恐慌

1ドル70円台の超円高が続いている。これまで何があっても日本に残って生産を続けていくと言っていた企業の中にも、韓国や東南アジアに生産拠点を移そうとする企業がでてきている。

この本はユーロ危機になった原因とユーロが抱える根本的な矛盾を明らかにするとともに、ユーロ危機以降、特に顕著になっている円高の原因を探る。

著者は、超円高の根本的な原因は日本の「デフレ」であり、デフレを何とかしなければ日本の経済の回復は難しい。デフレ解消のためには日銀が大幅に通貨供給を増やし、1〜2%程度のインフレに誘導すべきである。そうすることが出来れば、国内の景気も回復に向かい政府の財政状況も回復することができるという。

デフレは企業にとっても、金融機関にとっても、不動産関連企業にとっても、新卒にとっても、住宅ローンのある家庭にとっても、年金需給世代、国の財政にとっても悪いことばかり。とにかくデフレさえ解消できればすべてが良い方向に進んでいくように書いてある。

リーマンショック後、アメリカやヨーロッパは猛烈な勢いで通貨供給を増やしたのに対し、日本はせいぜい十数%程度。この通貨供給量の差が円の独歩高を招いたとのこと。

1%〜2%程度の緩やかなインフレを達成することをコミットして、日銀が通貨供給量をコントロールすべきだというのが「リフレ派」というそうだ。本を読む限りでは、いいことずくめのように思うのだが、日銀は「リフレ派」のいうように大幅な量的緩和は採用しない。

反対する人は、通貨供給量を増やしても、デフレの解消に効果がないだけでなく、過剰な通貨供給によって資産インフレの発生する。あるいは、適度なレベルにインフレをコントロールすることは出来ずに、ハイパーインフレに陥る可能性もあるという。